gatagatanagata14's blog

ワークアウトの記録や日々の思い出を残します

この部屋から東京タワーは永遠に見えない

「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」という本を読みましたので感想文を配信いたします。

かねてから気になっていたTwitter文学、所謂タワマン文学で話題になった麻布競馬場さんの短編小説集です。

ワードセンスが秀逸で割とサクサク読み進められます。面白くて一気読みしてしまいました。

 

大体のストーリーは、生まれ育った環境や機会(都会↔︎田舎、実家が太い↔︎細い、学歴有る↔︎無し、etc.)にコンプレックスをもった主人公が、他責したり見下したりしながら拗らせて、現状を嘆きつつ30歳になって振り返る話でした。

 

正直にいうとあまり自分はコンプレックスをもっていないので、共感はしないけどこういう人いそうだなーって感覚で読んでいました。

 

「3年4組のみんなへ」もすごく良かった。

 

「30まで独身だったら結婚しよ」

私が愛した彼のあのダサさは、奥さんがこの街で安く手に入れた品々で完全に拭い去られ、彼はそれと引き換えに、この街の代替可能な無数の部品のひとつとして、この街で大量製造されるキャンベル缶みたいな幸せを啜っているように見えました。選ぶことを放棄した者たちが歩む、幸せに至る一本の平坦な道。

"流山おおたかの森"に住んでいる家族の幸せは画一的なもの、と読み取れます。流山を馬鹿にしすぎだろ〜とは思いつつ、言わんとしていることはとてもわかる...

ただ――なんとなく、彼のためにずっと取っておいた私の心の中の特等席の予約をキャンセルするという行為が、まだ上手にできてないんです。

心のどこかに、彼が言った"30まで独身だったら結婚しよ"という言葉が残っていて忘れられない女性の感情がとても切ない...

 

 

「真面目な真也くんの話」

この話は、真面目だけど非効率で無能な大学の同級生の真也くんが、ゼミでも仕事でも失敗して病んでいく話を第三者視点で語るものです。

この話は自分への戒めも含めてとても響きました。

彼の人生に責任を持てない人だけが彼に優しくした。僕もだ。彼に論文の構想や進捗を聞かされるたび、何言ってんだこいつと思いつつ「いいじゃん、面白いと思う」とか「僕にはない目線だからいい棲み分けができるね」とか、調子のいいことばかり言っていた。あれは優しさではなく責任の放棄であり、彼の未来を見殺しにする行為だったと気付いた。

大人になると間違いを指摘してくれる人は、ほとんどいなくなるし、仕事でも厳しいフィードバックをくれる人は稀ですよね、基本憎まれるだけなので。

彼はどうも、頑張ることに逃げているらしいと気付いた。どうも昔からそうだった気がしてきた。努力のぬるま湯に、手を動かしていることのぬるま湯に首まで浸かっていれば、湯気で先の不安が見えなくて済む。彼は昔からそうして逃げているらしかった。彼は真面目なわけではなく、人生に対してひどく不真面目で、その不都合な事実から目を逸らすために、子どもがお母さんに怒られているときに手遊びをするように、努力に逃げているらしかった。

"頑張ることに逃げている" "努力のぬるま湯に逃げている"

これは仕事において自分もこの傾向が強くて反省も含めて考えさせられました。

とりあえず手を動かすことって楽だし安心するから、真っ先にこれをやりがちです。

本質的に問題を解決するために、何をするべきかや何が足りていないかを直視して、頭に汗をかいて考えることがやっぱり大事です。

自分はとりあえず手を動かして人生なんとかなってきただけに、これに気づくのがとても遅かったです。今の自分の課題です。

 

自分の性格や生い立ちに共通点のある話は、結構響く話はあると思います。

文章も上手くて面白いので一度読んでみてください。